Session3【共鳴の必要性】

目次

1:共鳴のメカニズム

共鳴のメカニズムを解説する前に、まずは「なぜ共鳴を行わないといけないか?」を考える必要があります。
共鳴を行う必要性とは、

1. 芯のある大きな声を出す
2. 相対音感を高める
3. 声帯の負担を軽くする

大きく分けてこの3点になります。

下図③をご覧下さい。
この図を使って共鳴のメカニズムを解説していきます

共鳴のメカニズム

図3

これは人間の首から頭にかけての断面図です。
各部位をまず説明していきます。

まず鼻。
鼻の穴は細いと思っている方がいますが(確かに細いには細いですが)、実は鼻の中はヒダ状の構造になっています。
この重なっているヒダ(上鼻甲介・中鼻甲介・下鼻甲介)から鼻水が作られます。
それが鼻の下の方へ垂れて行くという仕組みです。

さらに鼻の奥に行くと軟口蓋があります。
ここ一帯の空洞を上咽頭といいます。
円で囲った部分が上咽頭です。
上咽頭に声を当てることによって芯のある声を作り出すことが出来ます。
その出し方はもう少し後で説明をしていきます。

さらに下へ下がって行くと食道と気管に分かれます。
人間が食べ物を飲み込む時は、息を吸うことが出来ません。
気管の入口は弁になっていて、舌が食べ物を感知すると声帯へ食べ物が落ちないように閉じる仕組みになっています。
気管には食物や唾液などは流れず食道へと流れ込み、そして食道から胃に落ちます。
息を吸う時は弁が開いて、空気が気管へ流れ込みます。
時折むせて咳き込んでしまうのは、弁が上手に作用せずに異物が気管に入り込んでしまう為です。
異物を外に出す手段が咳だと考えると、咳は必ずしも悪いものではないと言えますが、声帯へのダメージが強烈なので、あまり咳をしない環境を作るようにしましょう。
さて、気管の入口から少し下には声帯があります。
声帯は喉仏の中に入っていて、男性だと外から見て場所を確認出来るので分り易いのですが、女性は喉仏が見た目は隠れているので外観からは分かり辛いです。

声帯図④

声帯は2本の割り箸のようなものです。
上の図④「呼吸時」のように息を吸っている時は開いています。
声を出している時は、図④「発声時」のように声帯が閉じることによって声帯が振動し、声が出る仕組みです(この時、息は肺から喉を通過しています)。
以上が首から頭にかけての各部位の説明になります。

次は共鳴させる方法です。
腹式呼吸が出来ていることを前提として話を進めていきます。
何度も言いますが「腹式呼吸が発声の基本」です。
どうすれば共鳴させることが出来るのか?ポイントは喉を開くことです。
喉の開き方は簡単にいうと、喉仏を下げることです。
しかし前述の通り女性の場合、喉仏が外から見えないことが多いです。
そのため舌を目安にして、喉が開いているかどうかを確認することが最適です。
男性がこの確認方法を取っても構いませんし、場合によっては喉仏を確認する以上に有効です。
喉が開いている舌の状態とは(母音「A」=「ア」の発声の場合)、

1. 舌の先端が下の歯の先端裏側にくっ付いている
2. 舌全体が下の歯よりも上に浮かない
3. 舌が滑らかに安定している(真ん中が凹んだり、盛り上がったりしない)
4. 舌根から舌の先端にかけて、滑り台のように滑らかに舌が下がっている
以上の4点が必要になります。

この4つを守ることにより、喉全体に空洞がしっかり出来るのです。
空洞が出来るということは、上咽頭に声が当たる基本準備が出来たということです。
この状態は大砲の筒のような口の状態ですから、声は真っ直ぐに前に突き抜けます。

しかし、まだ共鳴させるのに必要なことがあります。

それは「息を減らす」ということです。
息が多過ぎても少な過ぎてもダメです。
共鳴を完成させるための絶妙な状況を作り出すためには、腹式呼吸を理解した上で声を出して、息と声の大きさのバランスを知ることが重要です。

以下は共鳴の失敗例です。
真冬の寒い所で、「はぁ~」と手を温めるために吐く息は胸式呼吸です。
このような胸式呼吸に声を乗せた場合、はたして高音の発声は出来るのでしょうか?
不可能です。

共鳴は上咽頭、中咽頭、下咽頭、声の大きさ、息の量などが複合的に噛み合わないと成立しないテクニックです。

2:共鳴と相対音感

相対音感とは自分が音を取るために、何か他の音を基準にしないと判らない音感のことをいいます。
ほとんどの人が相対音感です。
絶対音感とは基準とする音が無くても音を判断出来る音感のことで、例えばスプーンが床に落ちたり、指で机を叩いたりした時の音さえもどの音の高さなのか判別出来る音感です。
どちらの音感も良い部分もあれば、悪い部分もあります。
絶対音感は幼少期(個人差はありますが大体10歳くらいまで)に備わります。
しかし絶対的な音感に頼ってしまうがゆえに、感性が鈍る場合があります。
相対音感は相対する音に対してアンサンブル、所謂音の調和を考えながら音を取るので、相対音感の感覚を磨き上げることで歌の表現力は豊かになります。

どちらにしても、これだけで歌が上手いか下手かを判別するものではございません。
単なる音楽用語程度に解釈して頂いて結構です。

さて、「共鳴と相対音感」という項目を設けたのには、もちろん理由があります。
共鳴による声の“骨伝導”を利用して、相対音感を高めるのです。
人間の耳の奥(内耳)には、三半規管や蝸牛(かぎゅう)という部分が存在します。
“平衡感覚”を司るのは三半規管、“音を聞き分ける”のは蝸牛という器官です。

今回重要なのは、音程を聞き分ける蝸牛という器官の方ですが、厳密に音感を高める場所は蝸牛だけではなく、三半規管も含めた中耳から内耳全体です。
蝸牛という単語は覚えて頂かなくても問題ありませんが、骨伝導を語る上では必要な部位です。

発声して人の頭で声が共鳴することによって、頭全体が響きます(共振します)。
当然、内耳の蝸牛まで響きが行き渡っています。

人間の耳は一度にたくさんの音を聞き分けることが出来ます。

ギターの音、キーボードの音、単音、和音等、色々あります。
それぞれに異なる周波数があります。
声をその周波数に合わせるという練習が、内耳(主には蝸牛)を使った共鳴による相対音感を高める練習方法です。

1. 外で鳴っているオケを聞く
2. 自分の声の振動を感じる
3. さらに自分の声が外で鳴っているのを耳で聞く

以上の3点をヒントにして、相対音感を磨き上げることが出来ます。

3:“抜ける声”とは

ボーカリストは、「抜ける声を出す」必要に迫られることが多々あります。
ライブの時などは抜ける声を出すように求められる、最たるケースです。
プロの現場でそういうことを求められるのは非常に多いのですが、一般的にはあまり知られていない“抜ける声”という表現は「一体どんなものなのか?」をここで解説します。

『抜ける声=マイクに乗り易い声』
と認識して頂いて構いません。
ボーカルの存在感を高めるためにも、抜ける声が必要なのです。
何より説得力がありますし、迫力が増します。
ではオケやバンドサウンドよりも抜ける声は、どうすれば発声出来るのでしょうか。
以下はその方法です。

1. 腹式呼吸をマスターする
2. 発声に対して息を少なくする
3. ハミングで唇を振動出来るようになっている(ハミングはSession6を参考にして下さい)
4. 部屋で発声する場合、部屋の四隅までビンビン振動して共鳴している(共鳴は共に鳴ると書いて共鳴ですから部屋も自分の頭の中も全てが共に鳴り振動します)

「抜ける声」と「抜けていない声」とは、自分自身で中々分別出来ない場合が多いです。
ボイストレーナーに聴いて貰う、誰か他の人に聴いて貰う、またはしっかりとしたレコーディングをして自分の声を客観的に聴く必要があります。

[guideline]

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