天才と凡才の差とボイストレーニング技術

LINEで送る
Pocket

テレビではたまに日本で一番歌が上手いと思う歌手は誰だ?という様な企画がありますね。
ランキング形式で発表される企画です。

日本のボイストレーナーや音楽関係者などが評価をし、良く上位にいらっしゃる歌手では『玉置浩二』さんだったり、『吉田美和』さんだったり、『福原美穂』さんだったり、『久保田利伸』さん、『宇多田ヒカル』さんだったり。

所謂日本のミュージックシーンで第一線でご活躍されている方々が登場されます。
どの方も息の長い活動をされていると思いますが、単純に歌がお上手なだけでは長く活動が出来るとは言えないと思います。
音楽以外のパフォーマンスなども必要なのは間違いありませんが、音楽的(歌唱部分)での才能はどんな状態にあるのでしょうか。

今回は歌手に限定して才能のある人と凡人(才能の乏しい人)との差が何かを考察したいと思います。
天才と凡才においてボイストレーニングというものがどの様な立ち位置で存在するかもお話ししてみたいと思います。

天才と凡才を分けるにあたって、一番分かりやすい部分では歌手が挙げられると思います。
他にもアナウンサー、講演家、政治家など職業は多岐に渡りますが、今回は歌手を中心に話を進めます。

声質

歌手にはプロフェッショナル(多かれ少なかれギャラが発生する人)でも才能に満ち溢れている人もいれば、才能がある人に比べると普通な人もいます。
才能がある歌手は決定的に何が普通と違うかと考えると、『声質』がまず筆頭に挙げられると思います。
ボイストレーニングの観点からお話しをしますと、この『声質』だけは生まれ持ったものがあり、その良し悪しというのは世の中の人々、つまり第三者が決める事です。

時代によって良い声質だなぁ、と思われるものも変化があります。
例えばフォークソング全盛期の頃に求められている良い声質と、ポップロックが隆盛している現代における良い声質は異なると言えます。

歌手において才能がある人は、まず声質が良い!という事が断言出来ます。

ピッチ

次にピッチです。
ピッチとは音程の事を指しますが、ピッチにも才能は関係します。
コンピューターの波形でピッチがハマっていても、微妙に高い帯域や低い帯域の声の成分が多過ぎたり少な過ぎたりするとピッチが不安定に聴こえる事があります。

才能がある歌手の場合、この声の成分の振り分けが絶妙に上手です。
実はこれはボイストレーニングではカヴァーするのが難しいもので、聴感上で良いか悪いかを判断します。
波形上、正しいのですからピッチがずれているとは言えません。
あとは気持ちよく聴こえるかどうか、という部分です。

才能が突出している歌手は気持ち良い部分にリスナーに聴かせる事が可能ですが、その様に才能のある歌手の場合、自分自身が共鳴によって歌唱中に「気持ちが良い」と必ず感じています。

つまりオーディエンスが聴き入っているのを目視して気持ち良さを感じているのではなく、歌手自身が歌唱している時に身体レベルで気持ち良いと感じているのがピッチ部分で才能ある人と無い人の違いです。

リズム

次にリズムです。
プロフェッショナルか歌手の場合、リズム感が良い人と悪い人は結構分かれるものです。

例えば、アイドルの場合はリズムが悪い人が多いです。
リズムのみならず、音楽的な部分がごっそり無い状態で音源をリリースして活動されている方も多数いらっしゃいますので、リズムに才能を感じないのは当然と思われます。

今回の場合はアイドル抜きの所謂、歌が上手い歌手の中でリズムの才能がある、ない、を判断してみたいと思いますが。
基本的に、皆さん、歌が上手い人はリズム感があります。

でも、才能という部分になるとさらに突出した感じ方があります。
歌でリズムをはめたい部分を『0』と定義しましょう。
ちょっと前のめりな部分を『+1』と定義。
ちょっと後ろにもたった感じの部分を『−1』と定義します。
つまり、
『+1』『0』『−1』
です。
どれも正解です。

リズムがジャストにハマるからと言って、必ずしも良いとは限りません。
歌詞のイントネーションや内容、メロディーの動き方次第では『+1』に来た方が良い場合もあります。
逆に『−1』に来た方が良い場合もあります。

時間で計測すると0.05秒みたいな世界なのですが、この微妙なずれは才能が無いと生産する事が難しいものです。
ボイストレーニングでは中々カヴァーし切れない部分がこの様な点になります。

音楽の三大要素

音楽の三大要素は昔からメロディー・リズム・ハーモニーの3つが定義されています。
これは普遍的なものです。

今回は歌唱のみに才能の観点からフォーカスしているので、3大要素の中のメロディーは外して考えていますが、リズムとハーモニー(ピッチ)は才能ありと凡人とを語る上では必須項目です。
リズムとピッチに才能がありながらも、声質という部分でも才能を発揮出来る歌手は所謂歌が上手い歌手になります。
たまにテレビ番組で歌が上手い歌手のランキングがありますが、その上位にランクインしているのはこの様な点で秀でている才能のある歌手たちばかりです。

さて、話しをボイストレーニングの軸にもう少し寄せて進めてみましょう。

結論から申し上げて、ほとんどのケースをボイストレーニングでカヴァーできると言えます。
しかし、『才能ある頂点に君臨する歌手たち』の微妙な聴感上の才能部分をボイストレーニングでカヴァーし切れるかと言いますと、かなり難しいと言えます。

その難しさをカヴァー出来るボイストレーナーがいる事はいますが、全員が全員出来るとは限らないと言う事です。
カヴァー出来るボイストレーナーは自分自身が才能ある歌を歌えるボイストレーナーである事が必須条件として挙げられます。

ボイストレーニングのレッスンの場で才能があるものを披露し、生徒に説得させられるボイストレーナーは少ないのです。
誰でも出来るわけではありません。
仮に披露してレクチャーしたとして生徒さんが吸収出来るとも限りません。
レベルが才能という部分まで来てしまうと、レッスンの域を超えたレッスンをする事になると考えられます。

ディスカッションが必要

歌手における上、とはあくまでも歌唱について書きましたが、この様にレベルを逸脱したスキルを身に着ける必要があります。
ボイストレーナーが関わる場合は、ボイストレーニングの観点からのレッスンのみならず、その歌手当人とのディスカッションも重要になります。

ディスカッションとは議論する事です。
実は高いレベルのボイストレーニングでは技術を伝授するだけでは生徒さんのスキルアップを最大限引き出す事は出来ません。
生徒さんが良い歌い方についてどの様な考えを持っているかをディスカッションしてボイストレーナーが頭に叩き込んで、こうした方が良いのではないか?あーした方が良いのではないか?と更に意見を出し合います。
そのディスカッションを重ねた先に一緒に良い歌を編み出して行くというのが、ボイストレーニングの流れとしては最良と思われます。

楽団やバンドは様々な楽器の集合体による演奏です。
ボイストレーニングはボイストレーナーと生徒さんの1対1による演奏だと考えて貰えると解り易いと思います。
演奏の深みを作って行くには時間が必要。
アンサンブルには時間が必要。
その上で、最終的にどこまで良いものを作って行けるかどうか、、、なのです。

※注意
才能がある歌を歌えるから歌手として売れるというものではございません。
凡人でも一定のスキルがあれば活動して行けるものです。
またタレント性を求められるケースも殆どの場合ありますので、今回の才能というものは歌唱力に特化したものだとご理解下さい。

LINEで送る
Pocket